ヒューマンファクターと安全
第二次世界大戦が終了してからの20世紀後半の50年間は、広範な科学技術の急速な革新と進歩が、 社会生活を大きく変え、利便性と豊かさを高めることが出来ました。
しかし、その反面、今まで見られなかった、莫大な損害や悲惨な犠牲者を伴う事故や災害が発生するようになりました。 これらの事故や災害の原因を追究してゆきますと、必ず人間要因、すなわちヒューマンファクターが関与していることが クローズアップされてきます。
科学技術を開発したのも、装置や機械を製作したのも、それを使用するのも、監督するのも、 それらのシステムを運用するのも、すべて「人間」そのものでしかありません。とすると、特異な未知の事象を除いて、 全ての事故、災害は人間が関与して発生しており、人間でしか防止できないと言えましょう。 ヒューマンファクターは次のように定義されております。
「機械やシステムを安全に、しかも有効に機能させるために必要とされる、人間の能力や限界、 特性などに関する知識の集合体である。」(日本ヒューマンファクター研究所)
とかくヒューマンファクターという言葉は、何か不具合が発生した時の原因のように「マイナス」のイメージを持って 使われていることが多いのですが、上記の定義のように、本来は「プラス」のイメージを持って使われるべきもので、 人間の歴史に見られる、素晴らしい創造性や知恵、器用な操作能力や芸術性、深い思考や思想などなど、 人間はそのもっている「プラスのヒューマンファクター」によって発展してきたのです。
ヒューマンファクターの特性は大変多様であり、複雑です。しかも時代や環境はもちろん、 集団、組織の雰囲気によっても変動してゆきます。 当研究所においては、主として安全に関わる 人間特性に焦点をあて、事故や災害の背後に潜在する広義のヒューマンファクター特性を追究するとともに、 「負のヒューマンファクター」を、いかに「プラスのヒューマンファクター」に転換出来るのかの対策を 調査研究しています。
日本ヒューマンファクター研究所
所長 黒田 勲