新所長 桑野偕紀 ご挨拶

  この4月から、当研究所の所長に就任しました。

  この研究所は、11年前の1998年11月に設立されました。当時は1995年に起こった阪神淡路大震災による大災害の 余韻も覚めやらないなか、その3月に地下鉄サリン事件が発生。翌年7月にはO157による集団食中毒事件、 97年から98年にかけては散発的に医療過誤事件や鉄道死亡事故が起こるなど、 また海外ではバリュージェットやTWAの爆発事故などの航空事故が頻発。チリでの大統領官邸のっとり事件など、 世の中が危機管理について考え直さなければならない状況にありました。

そのような社会情勢を見るにつけ、問題解決のためにはもっと人間の研究をしなければならないという認識が高まり、 ヒューマンファクター研究の大家であった黒田勲先生を中心に6人で始めたのがこの研究所です。 現在は、所長と3人の顧問を含め、14名で研究を続けています。

前所長の黒田先生は、皆さんよくご存知の通り日本におけるヒューマンファクター研究の第1人者でした。 まだ現役の所長のまま急逝されたため、その思いは研究所に色濃く残っています。社会安全のために我々が しなければならないことは何か、実社会で有効な危機管理とは何をすることなのか、 社会人のための教育や訓練はどうあるべきなのか、技術者の倫理やコンプライアンスはどうやって守っていくのか、 事故調査による再発防止策の策定と事故責任の追及はどう折り合いをつけていけばよいのか、 特に最近は「今まで経験したこともないような経済危機、世界的な規模の失業者の増加、急速な高齢化社会への移行、 医療従事者や介護担当者の不足などで、どれくらい条件が悪くても人類は生き延びていけるか・・・ という実験を始めたようなものだ」と心配しておられました。

私を始め研究所の所員は、こういった前所長の思いをしっかりと受け止め、今まで以上に研究に邁進するつもりです。

社会安全、危機管理、教育訓練、技術者倫理、事故調査など、どれを取っても人間のかかわりが重要なポイントになっています。 これからもいっそうヒューマンファクターの研究を深めていき、社会の役に立つ研修や講演や調査研究を企画していきたいと 考えています。

新年度を迎え、どちらの企業でも新しい体制でこの難局に向かって出発されていることと思います。 わが日本ヒューマンファクターも少し平均年齢が低くなって再出発しました。皆様のお役に立てるようがんばっていきます。 どうかご期待ください。

日本ヒューマンファクター研究所
所長 桑野偕紀

2009年4月